カルシウム
カルシウムは、人体の中で炭素、水素についで多く含まれ、実に様々な役割を担っていますが、99%は骨や歯の形成成分になっています。
私たちが自由に動けるのは骨のおかげです。骨を形成するカルシウムが不足すると、骨折しやすくなります。今、問題になっているのは、高齢者の大腿骨頸部骨折です。フトモモの付け根の骨がもろくなり、店頭などでヒビが入ったり、かけてしまうというもので、寝たきりになるケースも少なくありません。
将来にわたってイキイキとすごすには、40代からの骨作りが大切。そのためにカルシウムは欠かせない栄養素なのです。
骨や歯を形成するほかには、神経系の働きを調節したり、ホルモン分泌、血液凝固、筋肉収縮や心臓の拍動調節など、大切な役割を担っています。また、カルシウムが不足すると、イライラや情緒不安定をまねくともいわれています。
通常、血中カルシウム濃度は厳密にコントロールされています。カルシウムが不足して血中濃度が下がると、骨からカルシウムが溶け出して調節する「骨吸収」が行われます。つまり、骨はカルシウムの貯蔵庫の役割も果たしています。
「カルシウムが溶け出しつづけて骨がなくなるのでは」と心配になるかもしれませんが、食事からカルシウムを摂取すれば、骨に沈着し、「骨形成」が行われます。
「骨形成」と「骨吸収」を繰り返し、ヒビ、骨はつくりかえられているのです。
ところが、長い間、血中カルシウム濃度が低い状態が続くと、調節機構がうまく働かなくなります。骨からカルシウムを溶出させる仕組みが働きすぎて、逆に血中カルシウム濃度が高くなりすぎてしまうのです。
血液中の余分なカルシウムが骨に沈着すればいいのですが、細胞の中に入って高血圧や動脈硬化の要因になります。当然、骨ももろくなります。
カルシウムが慢性的に不足すると、様々な弊害をもたらすのがおわかりいただけるでしょう。日々、カルシウムを摂取することが大切なのです。
カルシウムは女性にとってとりわけ大切な栄養素です。妊娠・出産・閉経と、女性の体の変化は骨量も大きく変化させます。
妊娠時は赤ちゃんの身体をつくるために、出産後は母乳を出すために、骨からカルシウムが溶け出し、骨量は減ります。
重要なのは、出産後のカルシウム摂取。妊娠時にカルシウムを大量に摂取する人が多いのですが、それ以上に、妊娠前から適度に摂取しながら、出産後にカルシウムとその吸収や骨形成にかかわる栄養素を豊富に摂取することが大切です。
さらに、特に女性は閉経を境にして骨形成のメカニズムが急激に衰えていきます。骨形成を助ける役割を果たす女性ホルモンがほとんど分泌されなくなるため、どんどん骨量が減少するのです。このとき、骨量の減少を抑えて強い骨にするよう努めることが大切。貯骨の考え方でもあります。
年代によるカルシウム摂取の注意点
・20代:骨の形がほぼ決まる時期。一人暮らしなどで栄養が偏りやすいため、カルシウム不足にならないようバランスのとれた食事をとりましょう。
・30〜40代:骨密度は35歳ごろをピークに下がるので、適切な量のカルシウムを継続的に摂取することが大切です。
・更年期:閉経後の1〜2年、ホルモンの急激な変動で骨密度が低下します。カルシウムや大豆イソフラボンなどの摂取を心がけましょう。