風邪とインフルエンザ

 冬に体調を崩しやすいのは寒いからと思うかもしれませんが、それだけではありません。乾燥した空気も、冬の体調トラブルの大きな原因です。
 冬の体調トラブルで多いのは風邪ですが、様々な要因によって起こる「風邪症候群」という病気を総称して「風邪」と呼んでいます。その要因の80〜90%はウイルス。種類は200種以上あるといわれています。ウイルスは空気が冷えて乾燥していると、感染しやすくなります。夏風邪の下人となる湿気に強いウイルスもありますが、少数派です。

 また、風邪をひくのは、空気中のウイルスが鼻やのどから体内に侵入し、増殖するから。侵入し増殖したウイルスが、鼻やのどの粘膜に炎症を起こすために、鼻水やたんが出たり、せきやくしゃみをしたり、のどが痛くなるのです。風邪をひいた人のくしゃみやせきとともにウイルスを含む飛沫が空気中に撒き散らされ、さらに感染が広がります。冬は乾燥により鼻やのどの粘膜がウイルスに犯されやすくなることも、風邪が流行する要因になります。

 冬に猛威をふるうインヴルエンザを「風邪をこじらせたもの」と思っていませんか? でも、普通の風邪とは症状や特徴に大きな違いがあり、アメリカでは明確に区別されています。では、風邪とインフルエンザはどこが違うのでしょうか?
 インフルエンザの原因となるインフルエンザウイルスは、普通の風邪のウイルスよりも繁殖力や感染力がかなり強力。1個のウイルスが細胞に感染すると、24時間後には100万個にも増殖し、感染力が強いために短期間で大流行します。
 また症状も普通の風邪と異なり、急に38度以上の高熱が出るのが特徴。風邪の症状のほかに、筋肉や関節の痛み、下痢などの全身症状が出ます。さらに、抵抗力の弱い高齢者や乳幼児の場合、肺炎や脳炎などになることもあります。インフルエンザを風邪と思い違いしてはいけません。おかしいなと思ったら早めに受診されることをおすすめします。

インフルエンザと風邪の違い

風邪 / インフルエンザ
主なウイルス 
ライノウイルス(110型以上)、コロナウイルス(2型以上)、RSウイルス(1型)など
インフルエンザウイルス(A型、B型、C型)など

主な症状
くしゃみ、鼻水、鼻詰まり。のどが犯されると、のどの痛みやたん、せきなどが出る。鼻水は、最初は水っぽく、だんだんうみのようになることがある。
悪寒、38℃以上の急な発熱、全身の筋肉痛、関節痛、頭痛、だるさなどの全身症状。腹痛、下痢、吐き気などの胃腸症状が出ることも。熱がさがるころに鼻水、鼻詰まり、せきなどの症状が強くなる。

発熱
徐々に出る。37℃台
突然38℃以上の熱が出る。

感染
接触感染が中心
増殖が速く、感染経路も多く、非常に強い。

対策
早めに体を温かくして休養すれば、軽い症状だけでなおることも多い。ただし、症状が重く、いつもの風邪と違うなと感じたら、すぐに受診する
インフルエンザウイルスは多湿に弱いので、外出時はマスクをし、室内は加湿器などで湿度を60%程度に保つのが有効。帰宅時の手洗いとうがいも欠かさずに。

風邪を防ぐ体のメカニズム

 風邪のウイルスは鼻とのどから侵入しますが、防御する仕組みも備わっています。鼻やのどの粘膜には繊毛という細かい毛がびっしりと生えています。この繊毛は活発に動き、その上を流れる粘液に異物が付着すると、粘液にのせて安全なところへ運んでくれます。つまり繊毛が活発に動いているとウイルスに感染しにくいわけです。
 ところが、粘膜が乾燥したり冷やされると、繊毛の動きが鈍くなり、ウイルスが侵入しやすくなります。ウイルスに感染しないためにも、鼻やのどを乾燥させたり冷やしたりしないことが大切なのです。